ちょっといいもの-映画好き?
「クロスファイア」の感想

 かなりいい映画じゃない?宮部みゆきファンとしては、原作がすばらしかったからすごく期待してたんだけど、その期待に見事応えたよ。(完璧にとはいえないけど)

 まずは、なんといっても現代の大きな問題の一つである「少年犯罪」とパイロキネシスという「超能力」がうまく結びついている点。最近、ほんと理解できないような残酷な事件が多いじゃない?それを正義の炎で制裁を加えていくという展開は、こう言っては危険なのかもしれないけど、見ててすっとした。

 でも果たしてそれが正義と呼べるのか?というと疑問の残るところ。結局は同じ殺人者であることにかわりないのだから。その辛さというのを、矢田亜希子は熱演していたと思う。(まじかわいー(笑))淳子の強さと孤独さをほんとよく表現してた。

 ずいぶん昔に読んだので正確には忘れちゃってけど、原作はもっと違った視野から書かれてた気がする。映画では制裁が許され、完全な勧善懲悪じゃない?だけど原作では、もっと深くその問題について取り扱っていた。その面がちょっと残念だったかな。あと、ちょっとバンバン燃やしすぎでしょ?さすがガメラの監督だけど・・・(笑)

 一番よかったのは、淳子が死んだ後、彼女が身につけていたロケットの中に、愛する多田とその妹との楽しかった思い出の写真があった場面。今まで特殊能力のせいで人との接触を避け、信じるものは母親だけだった淳子の、唯一信用できた彼との愛、家族的な人間のつながり、そして悲恋の結末にはほんとほろっときた。

 最近少年法への疑問とか、人が人を裁くことについていろいろと考えているせいもあって、本当に身にしみる映画だった。原作(「クロスファイア」はもちろん、そのもとの作品である「燔祭」も)読んだことのない人は、ぜひ読んでね!(映画と原作の違いを考えると、もっと面白いよ)もっと宮部みゆき作品が映画化されないかなあ。(「本好き?」におすすめの作品もあるよ。)文句なしに星4つ。

(2000.6.19)