ちょっといいもの-映画好き?
「クイール」の感想

 思わず泣いてしまった。僕が犬が好きだから余計にかもしれないけど、いろいろと考えさせられた。盲導犬と人間との係わり合いというのももちろんなのだけれど、人間や動物の死について考えさせられたんだよね。

 この映画は、変わった親父がクイールと出会うことで変わっていき、最後自分の命が少ないことを知りつつ、自分を変えてくれたクイールとの最後の散歩をするというところが見せ場なのだろうけれど、それだけだったらこんなに心に来なかったと思う。本の方が全然感動できたしね。

 僕がぐっと来たのは、満の死後の葬式でのみんなの表情。人間はいつか死ぬし、僕はいつ死んでもいいように毎日を精一杯生きることをモットーにしているのだけれど、やはり自分が死んだ後に何かを残せたらと思ってる。それは具体的な形でという意味じゃなくて、他の人の人生に何らかの意味で影響を与えられる人間になりたいんだよね。その意味で、満はけったいな親父かも知れないけれど、やはりみんなの心に大きなものを残してる。僕にはそういった人生が送れるんだろうか?って思ったら、思わず涙が流れちゃったんだ。

 あともう1つ、やはりクイールの死の場面。僕ははちの姿がダブってしまって、見ること自体がつらかったのだけれど、しっかり見ようって思った。ペット産業の隆盛からか、犬を経済動物としてしかみない人も増えてきているようだし、ペットもかわいい時だけ飼って、年を取ったら捨てられて、殺されてしまうことも増えている。何でそんなことできるのだろうか?人間は動物を自分達の都合で何とかできるほど偉いんだろうか?

 命の大切さって言うのは簡単だけれども、本当に難しいことだと思う。だって人間は超利己的な生き物だからね。もちろん僕も含めてだけどね。最終的には自分さえよければいいという気持ちは、誰もが心の奥底に持っているものだと思う。そんな中でも、少しでも他者を思いやる心があれば違ってくるし、その思いやりと自分や他人の生と死というのは、切り離せない問題なんじゃないかな?そういった意味で、この映画に限らず、生と死を見据えたものは大事だと思うんだ。

 満が言ってたことじゃないけれど、僕は目の見えない人の気持ちは分からないし、犬の気持ちももちろん分からない。僕の視点でしかやはり周りを見ることはできない。でも、そんな中でも少しでも回りに目を向けられる人間になりたいと思った。そんなことを感じさせてくれる映画だったな。ということで星は4つで。映画を見た人は、ぜひ本も読んで欲しいな。

(2004.11.13)