ちょっといいもの-映画好き?
「世界の中心で愛を叫ぶ」の感想

 さすが話題になるだけあって、感動的な映画だったよ。

 愛する人が病気でいなくなってしまうという状況を僕は経験したことはないのだけど、想像を絶する空虚感にさいなまれることは間違いないだろうから、アキを失ったサクの苦しみはものすごいものだっただろうね。でも僕が感じたのは、日々弱っていく中で見えてくる2人の気持ちの強さだった。

 多分死んで会えなくなるだろうことは、もう分かってるわけじゃない?それなのに、というよりもそれだからこそ、サクはアキの夢であるオーストラリアに連れて行こうと必死にがんばるし、アキは死の恐怖に直面しながらも、サクには自分の未来を生きて欲しいという気持ちをテープに託す。このようなお互いを思いやる気持ちって、そうはもてないよね。だから、悲しいは悲しいんだけど、心が暖かくなる気がしたのは僕だけだろうか?

 一番感動したのは、やっぱり台風のせいでオーストラリアに行けなくなるシーン。アキもサクももうラストチャンスだということが分かってる。だからこそ、行けなくなった時の2人のセリフは、悲哀に満ちていた。特に「助けてください!」って天に叫ぶシーンは、思わず涙が出た。あのシーンはCMでよく流れてたけど、周りの人に助けを求めるのかな?って思ってたんだよね。でも、サクは届かないものに向かって必死に叫ぶ。うーん、人生ってのは本当に無常だね。

 あと、サクはアキが死んでから、自分の人生を生きてなかった。でも、今回改めて自分の過去をたどることで、そして最後のテープに入っていたメッセージを聞くことで、アキの死にも向き合えたし、自分自身の今の人生を見ることができたはず。ここらへんは、つい現実から逃げてしまいがちになってしまう人間の性が見事に出てたね。そのきっかけに、過去ってのはやはり大事なのだなあと改めて思ったよ。忙しいと、過去を振り返る余裕なんてないからねえ。

 ストーリー的には、テープを渡すメッセンジャーが律子で、しかも渡す時に事故にあって渡せなかったっていうのが分かった時は、うまいなって思った。もちろんできすぎっていえば確かにそうだし、交通事故にあった時に持っていたテープが昔の服から出てくるというのは正直ありえないのだけど、やっぱり劇的にしないと面白くないからね。他にも、重病の患者を病室から連れ出すのはまずありえない設定だし、道義的にはあってはいけないんだけど、その分2人の気持ちが出てるんじゃないかなあ。何もなく生きながらえるよりは、死んでも自分の生を全うしたいというね。この現実と虚構のバランスは難しいのだけど、僕はそういうところを補って有り余るぐらい、2人の人間ドラマに感動できたよ。

 そして、テープってのがいいよね。今は携帯ですぐ連絡取れちゃうけど、昔って彼女に電話する時って家電だったから、超緊張したんだよね。お父さんがでたら思わず切っちゃったりして。(笑)それをちょっと思い出した。電話ではなく、交換日記でもなく、テープのやり取りってところが、何かいいんだよなあ。アキの親にサクは嫌われているのだから、テープにすることに意味があるしね。そこら辺が、この物語をノスタルジックにしてる要因だろうね。

 それにしても、長澤まさみは本当にかわいい。映画「クロスファイア」の時から「おっ」て思ってて、テレビドラマの「さくら」でも「かわいいな」って思ってたんだけど、今では大スターになっちゃったね。透明感があるんだよなあ。妹とかにしたいタイプだね。あと、サク役の男の子(調べたら森山未來というらしい)は、大沢たかおにそっくりだね。まじで大人になったらああなりそう。同一人物の子供役って探すの難しそうじゃん?すごいキャストだなあって思ったよ。

 期待がめちゃめちゃ大きかったので、そこに応えられたか?っていうと微妙だけど、素直に感動できる映画だったので星4つで。ぜひ原作本を読んでみたいなあ。

 PS 世界の中心で叫んでないじゃーーーーーん!(笑)

(2005.10.8)