ちょっといいもの-映画好き?
「海辺の家」の感想

 かなりいい映画だった。ストーリーは簡単。死期を知った男が、自分の息子との関係を一緒に家を建てることによって見直していくという単純な話だし、家族愛とかもありがちなのかもしれないけど、その中には家族崩壊・離婚・複雑な親子関係・青少年犯罪・ドラッグなどなど、社会的問題をうまく取り込んでいるし、伏線とかもうまく張られてて、後で効いてくる。その中で父と息子が対立から愛し合っていく様が心に訴え感動できる。とにかくうまい映画っていうのが印象に残ったなあ。

 人間が何かをやろうとおもう瞬間っていろいろあるんだろうけど、自分の死期を知るっていうのは、壮絶なきっかけなのかもしれないね。ジョージはその時に初めて自分の人生に向かい合うことができたわけだし。その中には息子や前妻とのことはもちろんのこと、自分の父との複雑な関係が含まれるってところが、とてもいいんだよな。やっぱ人間、現実から目をそらさずに向かい合わないと。でも、やっと向かい合えたと思ったら死を迎えるわけでしょ?そこがはかないんだよなあ。そしてそうなるまで気付かないのもまた人間であり、それこそが人間の弱さでもある。

 あと、息子のサム側から見てもこの映画はいいね。彼は成長していく中で、自分が何になりたいのかを見つけられずに、そのストレスが非行に現れる。でも父と一緒に作業をすることで変っていく。しかも家を作るためには、一度壊して作り直さないといけないじゃない?そういう破壊と創造っていうのは、人を成長させる上で大きな経験になると思う。最近の子供はなかなかそういうのできないしね。だからこそ彼は、父の死後に家を譲ることにした。あそこがいいシーンなんだけど、彼にとってはあくまで作った家は父のものであり、自分の家は自分で作らなければならないっていう思いがあったんじゃないかな?

 それと、この映画はとにかく伏線がうまい。正直、サムがホモの相手をして金を稼ごうとすることとかは、見てて気分よくなかったんだよね。でもそれを逆手にとって文句を言ってきた隣人を追っ払うのに使ったとこなんかは、まじでうまくて笑っちゃったよ。他にも隣の家で母親が娘のボーイフレンドとやっちゃうとこなんかも、ロビンと夫のカムフラージュになってるし、ジョージの父親のことも一番最後のシーンにつながってるしと、ほんとうまくできてる。

 ありがちなのかもしれないけど、こういう感動できて、しかもうまい映画って、僕は好きなんだよね。だから星4つあげちゃおう。

(2002.8.9)