ちょっといいもの-本好き?
『らせん』の感想

 うーん、あらためて読み直してみても、怖い本だね。『リング』より直接的な怖さは少ないかもしれないけれど、重さも含めると、いい勝負かな?

 前作は自分の意思と反して、貞子の協力者になっていたじゃない?最後は自らの意志で、自分の家族を助けるために肉親にビデオを見せるわけだけど、それも自らの意思というよりも、どうしようもなくという感じ。

 でも『らせん』では、最終的に追い込まれてやるとはいえ、自ら協力者になるでしょ?しかも、全人類を敵に回す。人間の持つ内面の恐ろしさという意味では、『リング』より罪が重いかも。

 だけど、少し科学的すぎて、現実感は薄い気もする。ただ、遺伝子操作など、最近科学の発展がどこまで許されるのか?という疑問があるじゃない?ほんと、どこまで許されるのだろう?僕は神を信じているわけじゃないけど、人間が自然の秩序を破るのって、やっぱりおかしいと思うんだよね。

 あとこの話では、安藤が自分の責任で失ってしまった息子を、ずっと思い続けているでしょ?彼にとって、失った息子を取り戻せるということは、何よりも代えがたい報酬なのだろう。『リング』でもそうだったけど、鈴木光司の小説って、何よりも家族愛を大事にしてるんだろうね。だから、許されないこととは分かっていてもその行為を犯してしまう。そうだからこそ、みんなの身にもつまされて、恐怖が増すんだろうなあ。

 最初読んだ時は、「『リング』のが全然怖くて重いし、すごいなあ・・・」って思ったけど、読み直してみるとこの本も負けず劣らずすごいね。