ちょっといいもの-お芝居好き?
「A R T」の感想

 すっごいおもしろかった。さすが、全世界でヒットしてるだけのことはある。

 まず、せりふのやり取りが面白い。彼らのせりふはうけをとるために観客に向けられているのではなく、相手に対する率直な気持ちなんだけど、それが逆に腹を抱えるほど面白い。ああいう人って身近にもよくいるし、端から見てればたわいもないけんかなんだけど、当人たちにとってはとても重大な問題ってこともよくある。なんせ、自分の価値観を否定されるんだからたまったもんじゃない。しかも、この劇で問題になってるのはそれぞれの美意識だから、そりゃあ真剣になるだろうよ。よく、男同士で誰がかわいいとかかわいくないとかってもめることあるけど、あれも好みの差っていってしまえばおしまいなんだけど、やけに白熱することってあるよね。(これは、女の子同士でもあるらしい)

 ひとつひとつのせりふにも面白い部分がいっぱいあって、大笑いしてしまった。特に面白かったのは、イワン役の平田満さんのちょー長ぜりふ。(おんなってこわいわ)よくあんなに長いせりふを早口でしゃべってかまないもんだなあ。(終わったときは場内大拍手だった)あと、セルジュ役の益岡徹さんが、マークの奥さん(ポーラだったっけ?)の悪口を言うところ。(ああいう女ってたしかにいるよね?)

 配役もよかった。3人とも実力がある役者さんだし、(あとひとりは、市村正規さん。こないだ、古畑任三郎にも指揮者役で出てました)3人とも抜群にうまかった。登場人物たちが、本当に身近に感じられたもん。

 あと設定として、白い下地に白いラインが数本っていうの自体が、もうおかしい。最初に見たときに、もうおかしくてたまらなかった(これは、脚本家の実話だったらしい。)僕は、あんな絵に500万も出すセルジュが信じられないけど、たしかに絵って値段のつけられない部分があるしなあ。けど、ほんとにその価値をわかって買ってる人なんてほとんどいないんだろうなあ。

 でも、ただ笑わせるだけじゃなくて、その中にも友情の難しさや大切さ、中年男たちの悲哀が滲み出ていて、心に残るお芝居でした。(久々によいものを見た)この夏ニューヨークにいったときは、ぜひとも見てみたいと思っています。